リュック・ベッソン監督最新作『DOGMAN ドッグマン』のトークショー付試写会が2月26日(月)ユーロライブにて実施され、映画ライターのよしひろまさみちが登壇し、MCの奥浜レイラと共に軽快なトークを展開した。
上映後のトークショーということもあり、まず本作の感想について聞かれるとよしひろは「(第80回)ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で初上映されたときのレビューを読んで、不安な気持ちになった。ドラァグクイーンで犬使い?ドラァグクイーンの理由はあるの?って。でもレビューが爆上げで高評価だったから、ちゃんと理由付けがあってマイノリティを描いているんだろうな、と。一方、リュック・ベッソン監督作品で男主人公ってほとんどヒットした試しがない。これってどんな映画なんだろうと思ったのが最初だったんだけれど、実際に観て、すべて腑に落ちました」と、本作への第一印象と鑑賞してから一転した感想を率直に明かした。さらに「これまでの監督作には(設定が)緩い作品が多かったんだけど、この作品は本当に硬派。主人公の子供時代(の描写)が長いんだけれど、長い故に(大人になって)彼が食いしばろうとしていく後半部に生きてくるようにできている。」と付け加えて、リュック・ベッソンの新境地ともいわれる本作の特徴を解説した。
ここで好きなベッソン作品(監督/製作問わず)を尋ねられると「昔は『フィフス・エレメント』が好きだったんだけれど、久しぶりに観たらやっぱり珍妙な映画で(笑)。でもルックがとてもいい。リュック・ベッソンの才能はルックの良さ。全部の作品でルックが異様にいい」とベッソン監督の唯一無二の才能と魅力を語った。
そのうえで、「監督作のなかでもずば抜けて好きな映画」と断言したよしひろは「とにかくワンコ。ドッグトレーナー様様です」と、本作で非常に重要な役割を果たしている犬たちの演技を絶賛。プロのドッグトレーナーから見ても異例だと言うほどの多数の犬を出演させての撮影に「多くの犬種を集めるだけでも大変なのに、さらに芝居をつけている。どれだけ動物のカットに時間をかけたのだろうか」と、ベッソン監督のこだわり抜いた演出に驚きを隠せない様子。お気に入りのワンちゃんは?と尋ねられると、「(犬が)警察に入ってきて『僕、かわいいでしょ』とキメるシーンがあって。そりゃやられるよね(笑)私の推しです」と返し、よしひろも本作のワンちゃんたちにメロメロのようだった。
ここで、本作の演技が『ジョーカー』のホアキン・フェニックスを彷彿とさせると称賛され、演技派若手俳優として頭角を現している主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズの話題へ。「本作は新境地だったのでは。『スリー・ビルボード』で演じたマチズモな保守寄りの男性のイメージが強かったんだけど、こういう役もやってくれるんだ!うまいよ!」とよしひろは本作の名演ぶりを絶賛。「なりきりがすごい。特徴のある顔をしているのだけれど、役に入ると全然わからなくなる」と、ケイレブが演技派と評されるゆえんに観客もうなずきながら納得の表情を見せていた。またケイレブのキャリアについて「彼くらいの年代だとハリウッドで主演できる作品には大作が多かったり、活躍するのはなかなか難しいのだが、やりたいことをやりながらステップアップができている。40代、50代になったらウィレム・デフォーのような俳優になれるのでは」と評し、ベッソン監督の次回作『ドラキュラ』にも出演が決定してるケイレブの今後の活躍にも期待を寄せた。
リュック・ベッソン作品と言えば、デビュー作『最後の戦い』以来、何度もタッグを組んできたエリック・セラが手がける音楽も欠かせない存在のひとつ。本作でも印象的な楽曲の数々でその手腕をいかんなく発揮しているセラについて「ポストクラシックのはしりとでも言うのかな。ジョン・ウィリアムスとも違うけどオーケストレーションの上手い人。ジャズの理論を用いてクラシックに落とし込むのが非常に上手な音楽家」と、来月末にはファン待望の来日公演を控えた名作曲家を紹介した。またトークパートの最後には「犬は無事です!これはものすごい大事なことです」と念を押す一幕も。
トークパート後にはプレゼント抽選会を実施。当選者へオリジナルTシャツが贈呈されるなど、観客との交流を楽しむ一幕もあり、よしひろのジョークを交えた軽妙な語り口に会場は終始笑いに包まれたまま、本イベントは終了した。
2024年3月8日(金) 新宿バルト9ほか全国公開